「聞くべきは、不満になる前の声だった」メビウス製薬が「対話」で実現した、解約率3.8%から1%への改革
メビウス製薬は、50代から80代の長く使い続けるお客様に支えられるスキンケアブランドを展開しています。電話を好まれるお客様が多い中、業務の効率化のために、注文や手続きをWebサイトやマイページへ案内する取り組みを慎重に進めました。ところが、電話でのつながりを絶たれたお客様が離れてしまい、解約は4倍に増加。しかもコールセンターは外部に委託していたため、お客様が何を感じているのか、その声は会社から見えない「ブラックボックス」になりがちでした。
転機は、お客様の声(VoC)を本気で聞く仕組みづくりです。電話などで寄せられるお客様の声を集めて分析できる仕組み「IVRy Data Hub」を導入し、不満やクレームになる前の小さな「違和感」や「サイン」を全社で見える化。聞き出した本音を、ブランドの伝え方の見直しにまで活かした結果、解約率は約3.8%から1%へと改善しました。
本記事では、株式会社メビウス製薬 代表取締役の長谷川貴一さんが語った、お客様の声を経営に活かす取り組みを紹介します。
アイブリー導入の成果サマリー
- 課題とデータ基盤の導入:効率化目的のWeb誘導により顧客が離れ、解約が急増したメビウス製薬。ブラックボックス化していた顧客の声を捉えるため「IVRy Data Hub」を導入し、クレームに発展する前の「顧客の違和感やサイン」を全社で可視化・共有。
- 顧客の本音を捉えた成果:アフターコールワークの作業自動化によりオペレーターが顧客との「対話」に集中できる環境を構築。引き出した深層心理をブランドストーリーの再構築に活かした結果、解約率を3.8%から1.0%へ劇的に改善し、受電率ほぼ100%を維持しながら大幅な体制効率化も達成。
「心のこもらないDX」で、解約が4倍に
メビウス製薬は、50代から80代の長く使い続けるお客様に支えられるスキンケアブランドを展開しています。創業20年を超え、約4年前にINSTYLE GROUPへ加わって現在経営体制になりました。登壇した長谷川さんは、「めちゃくちゃ現場には入ってやってます」と語る現場派の代表です。
お客様との接点はWeb・電話・DM・同梱物と幅広く、特に電話を好まれるお客様が多いのが特徴です。効率化を狙ってWebやマイページへの誘導を慎重に進めたつもりが、電話でのつながりを絶たれたお客様が離れ、結果として解約が4倍に増えてしまったといいます。
外部委託のコールセンターを利用しており、顧客の声はどうしても「ブラックボックス」になりがちで、膨大なデータから本当に見るべき声を見つけ出すのは困難でした。

図: お客様との距離が重要だった(登壇資料より)
「不満になる前の声」を全社で見る
転機は、お客様の声を本気で聞く仕組みづくりです。創業以来20年分の膨大な声は、すでに集まっていました。しかしコールセンターの現場は、どうしても緊急度も温度も高い声、つまり不満やクレーム、強い要望への対応に集中します。長谷川さんが向き合いたかったのは、緊急度は低くても重要度の高い「違和感」や「サイン」。不満になってからの声ではなく、その前の声です。
「IVRy Data Hub」を導入し、自然言語での検索と分析で「不満になる前の声」を可視化しました。見たい項目をカスタムすればデータが自動でランキング化され、Slackと連携して必要なデータは毎朝10時に届きます。「やばい、解約が多い」といった、いつもと違う「変化」を誰よりも早く察知できる状態をつくりました。
CSだけの仕事から、全員の仕事へ
最大の変化は、お客様の声が「カスタマー部署だけが見るもの」ではなくなったことです。CRMや企画、商品チームまでもが、グラフや図で一目で分かる声を能動的に見に行くようになりました。
一目で自分ごとになる見やすさが、CS以外の部署からの改善提案を増やし、コスト・売上・お客様のペイン、それぞれの面で改善スピードを高めています。
示唆を出すのはAI、決めるのは人
「IVRy Data Hub」は、データから「課題は何か」まで自動で示します。それでも、それが本当にやるべき課題なのか、どの優先順位で取り組むのか。その判断こそ人が介在すべき箇所だと長谷川さんは語ります。
あわせて、弱点だった施策の効果検証も変わりました。打ち手の後に「結局、効果はあったのか」を通話データで可視化し、デイリー・ウィークリー・マンスリー、すべての単位で変化を追えます。重要だが緊急ではない課題に取り組む人と、緊急の対応に向き合う人を分けられるようになったことも、現場の大きな変化です。
「対応」から「対話」へ、ブランドごと変える
長谷川さんが最も強調したのは、「対応」から「対話」への転換でした。コールセンターには「お客様と仲良くなってください」と伝え、オペレーターがメモや本社提出のために費やしていた作業を自動化し、お客様と仲良くなることだけに集中できる環境を整えました。
その先で聞こえてきた顧客の声は、「もう使ってるメリット分かんないんだよ」「もう惰性で使ってます」といった耳の痛い本音でした。続けてもらう価値が薄まり、訴求すべき軸がぶれている。そのサインに向き合い、ブランドストーリーそのものを描き直しました。
結果、解約率は約3.8%から1%へ。コールセンターは30名体制から10名体制へと変わり、お客様からの連絡の数は変わらないまま、受電率はほぼ100%を保っています。深掘りされた本音がそのまま意思決定に使える形で上がってくる。それが商品開発と経営の質を変えました。

図: 「仲良くなる」をテーマにした結果、ブランド体験が変わった(登壇資料より)
※記事内の登壇者およびアイブリーに関する情報は登壇時点のものです。