東京都が制定した「カスハラ防止条例」とは

東京都は、2023年10月にカスタマーハラスメント防止に関する検討部会を設置して検討を進め、東京都カスタマー・ハラスメント防止条例を制定しました。条例は2025年4月1日に施行されています。
この記事では、東京都が条例の制定に至るまでの検討の経緯を紹介します。
カスタマーハラスメントの定義と影響
カスタマーハラスメント(カスハラ)は、東京都の条例では、顧客等から就業者に対し、その業務に関して行われる著しい迷惑行為であって、就業環境を害するものと定義されています。
著しい迷惑行為とは、暴行、脅迫などの違法な行為や、正当な理由がない過度な要求、暴言などの不当な行為のことです。
こうした行為は、働く人の就業環境を悪化させるだけでなく、サービスの品質低下や事業活動の継続にも悪影響を及ぼします。
検討部会の構成と議題
「カスタマーハラスメント防止対策に関する検討部会」には、各団体からの推薦者や労働法の識者などが参加しています。2023年10月〜2024年4月に計4回開催され、以下の議題について意見が交わされました。
詳細に関しては、東京都の公式サイトで資料が公開されています。

カスハラ防止条例の検討の経緯
検討段階では、カスハラの基本的な定義を条例で定め、具体的な行為の例はガイドラインで示すことで、社会全体の共通理解を図る方針が示されていました。この方針は、2024年5月22日に開催された「公労使による『新しい東京』実現会議」で共有されています。
当日の内容は、以下のYouTube動画で確認できます。
その後、条例は2024年10月に東京都議会で可決・制定され、2025年4月1日に施行されました。
検討段階の方針どおり、具体的な行為類型や事業者の取り組みについては、2024年12月に策定された「カスタマー・ハラスメントの防止に関する指針(ガイドライン)」で示されています。
さらに2025年3月には、業界団体が独自のマニュアルを作るための手引きとして「カスタマー・ハラスメント防止のための各団体共通マニュアル」も公表されました。
カスハラと正当なクレームの境界線
具体的にカスハラに該当する行為としてはどのようなものがあるのでしょうか。東京都はカスハラに該当する行為と該当しないと考えられる行為について、「3千円で購入した子どもの誕生日ケーキの名前が間違っていた場合」を例としてあげています。

申出の内容が不当な場合
- 行為の手段が不当: 店員の胸ぐらを掴み1億円を要求 → カスハラに該当
- 行為の手段が相当: 丁寧な口調で1億円を要求 → カスハラに該当
申出の内容が相当な場合
- 行為の手段が不当: 店員の胸ぐらを掴み3千円の返金を要求 → カスハラに該当
- 行為の手段が相当: 丁寧な口調で返金や交換の希望を申し出 → 原則としてカスハラに該当しないが、状況により該当する場合も
実際の現場では、これらの判断が難しいグレーゾーンも多いことが示されています。
東京都の条例と国の法律。カスハラ対策は全事業主の措置義務に
東京都が条例を制定した一方で、国の法律もカスハラ対策を事業主に義務付けています。
令和7年法律第63号により改正され、2026年10月1日に施行された労働施策総合推進法第33条によって、カスタマーハラスメント対策は全事業主の措置義務となりました。
東京都内に限らず、従業員を1人でも雇用していれば対象となり、企業規模や業種による適用除外はありません。
講ずべき措置は令和8年2月26日 厚生労働省告示第51号(指針)に5区分10項目で定められており、指針は、社会通念上許容される範囲で行われたものは正当な申入れであり、カスタマーハラスメントには当たらないとしています。
国の法律にも刑事罰はありませんが、措置義務に違反した事業主は、厚生労働大臣による助言・指導・勧告の対象となり得ます。勧告に従わない場合は、その旨が公表されることがあります(労働施策総合推進法第42条)。
参考:事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針|厚生労働省
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対象となる事業者は「常時雇用する従業員が300人以下の都内中小企業等」で、その他いくつかの要件を満たす必要があります。また、カスハラ対策に関するマニュアルの整備し、実践的な取り組みとして「録音・録画環境の整備」、「AIを活用したシステム等の導入」「外部人材の活用」のいずれかを実施している場合に限られます。
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